EVENT REPORTイベントレポート

「Kyoto Startup Ecosystemをより豊かに」 ―「スタートアップのシード期からアーリー期へ繋がる資金調達」(2021/2/8開催)

資金調達に成功した京都のスタートアップと首都圏のVCの方々とで「スタートアップのシード期からアーリー期へ繋がる資金調達」をテーマに、パネルディスカッションをオンラインで実施しました!

※動画は以下からご覧ください。
スタートアップの事業紹介
https://youtu.be/QVakXLK8nlU
パネルディスカッション
https://youtu.be/RHhtAQUt5LQ


(登壇者)
・スタートアップ(画面上左→右)
Baseconnect株式会社 代表取締役社長 國重 侑輝氏
株式会社FLOSFIA 代表取締役社長 人羅 俊実氏
Stroly 代表取締役社長 兼 共同CEO 髙橋 真知氏

・VC(画面中央左→右)
Abies Ventures パートナー長野 草太氏
Coral Capital シニアアソシエイト 世古 圭氏
STRIVE インベストメントマネージャー 古城 巧氏

 ・モデレーター(画面下)
Monozukuri Ventures 代表取締役 牧野 成将氏

まず、登壇スタートアップの高橋さん、人羅さん、國重さんから、自社の事業の紹介があり、首都圏のVCで勤務されている、長野さん、世古さん、古城さんから自己紹介をいただきました。

その後、創業初期のスタートアップ(以下、SU)が必ずぶつかる共通の課題である、創業期の資金調達について、京都と東京の互いから見た感じ方などについて、モデレーターの牧野さんを通じて根掘り葉掘りお話をお伺いしました。

〇 コロナはチャンス

コロナで世界の経済は大きく影響を受けたものの、登壇VCの3名は今回の変化について、おおむねポジティブな意見をお持ちでした。

長野さん(以下、長野)オンラインでの面談が増えたことで、SUとの初回面談のハードルも下がり、実は環境は好転しています。移動の時間も考慮すると、海外のスタートアップとのやり取りは特に良い影響が表れ、研究開発型SUやグローバルで戦うSUにとっては、好環境が整ってきています。 さらに、米中の経済摩擦もあり、海外から日本への投資が改めて見直されています。

世古さん(以下、世古)資金調達のレポートにより現況を知るのも一つの手法です。レポート上では、昨年対比で件数も調達額も減っていますが、肌感覚としては、合っていないと感じています
以前と同様のペースで投資業務は行っています。当社はフルリモートで投資が完了しており、コロナで業務効率が上がり、1.5倍から2倍のスタートアップとの接点が持てています
コロナで効率が上がり、良かったという面がある一方で、実際の投資成果については数年先でないと分からないです

古城さん(以下、古城)ファクトベースではないのですが、現場の肌感覚としては、シリーズA・B、レイターは厚めに調達ができているイメージがあります。学生起業家には悪影響が出ているかもしれないです。コロナにより学校に行けなくなったため、チーム作りがしにくくなっている側面があります。学生起業家が減った分だけシードが少し減っているかもしれないです。

〇 スタートアップから見たコロナの影響

高橋さん(以下、高橋)CVCは、コロナにより本業の事業転換を迫られているところもあり一気に流れが変わりました。一方、銀行系はあまり関係なく、コロナの中でもスピーディーに対応してくれました。すごく感動したし、勇気付けられました

人羅さん(以下、人羅)投資してくれている会社は、コロナの影響をそこまで受けていない企業であることから、コロナの先行きが見えない中、昨年、資金調達を厚めに行うことができました。

〇 東京からみた京都のエコシステム

牧野氏から、「京都エコシステムの中だけではまだまだ限界がある。東京もしくはグローバルのVCとの繋がりが重要だと思うが、京都のSUに対するイメージや今後、京都のSUとの関わり合い方はどうか」についてお伺いすると、

世古京都は研究開発のSUが多いし強い。一方で東京とはマーケットや人口が違う。人材面においてもサービス系エンジニアは東京の方が多いです。
ただ、コロナでそこも好転するのではないかと思っています。我々も積極的に京都、関西地域にも行き、SUとお話ししたいです。京都は独立したエコシステムがある、という見え方がしています。京都の方からももっと外に出てきて欲しいですね。

古城京大を中心としたラボにおもしろいSUがいるイメージです。また、京都のエコシステムは地場のスタートアップにやさしいのかなと思っています。例えばアグリ系のSUであるマイファームさんは、地場の支援者に支えられているのかなと感じます。
東京のVCやSUはSNS上でワイワイしていること、出資フェーズの横・縦のつながりでSUを紹介し合っています。そのため、東京のSUは、何かしらの方法でVCとつながっていますね。
京都側がしっかりと繋がろうとしても、東京側がそこを広げようとしていないのは一つの要因ですが、最近ではThe Seedさんなどが、広げようと尽力されていると思います

〇 京都のスタートアップ、どうやって東京VCへフックする?

國重さん(以下、國重)関西のSUが一番困る部分は、関西で大きく調達しようとしても、それが出来るVCがほぼ無いです。一定額を調達しようと思うと東京や海外のファンドとやっていかないといけないのが現状です。
実際に、弊社も出資の約8割が東京のVCからの受け入れです。
また、東京のスタートアップ村(コミュニティー)に入っていくことが重要。この村は、信用で成り立っていると思います。いきなり素性が知れない京都から来たSUだと、中々信頼されにくいです。その村に信用されている他者からのリファレンスなしには、VCは普通投資できないと思います

牧野國重さんはどうやって入っていったのですか?

國重もともと、シリアルアントレプレナーだったので、東京にも事前に知ってもらえていました。当時関西の学生起業家数は少なく、その経歴を覚えていてもらえていたのですが、簡単にそのコミュニティーに入れないからこそ、コミュニティーの質が担保されている一面もありますね。

高橋関西だと、大阪イノベーションハブのO-SAPへの参加を通じて、東京のVCと出会い、結果、最初のリードVCにお会いすることが出来ました。
その後、リードVCを起点として、色んな方とお会いできました。また、自力でSUともネットワークを作り、VC情報を共有するなど、両側面で関係構築を頑張りました

人羅最初の出資を受ける際に、コアな技術領域に投資するVCは、当時全国的にもほとんど無かったと感じています。
(※注:当時はまだ、京都大学イノベーションキャピタルも未設立)
ただ、UTEC(東京大学エッジキャピタルパートナーズ)に行った時に全然印象が違いました。
やはり餅は餅屋だなと感じました。事業会社は、証券会社経由や展示会で知り合うことが出来ました。会いたいなと思ったら会えていたという感じです。

〇 大事なのは「信用」と「戦略的な営業」

牧野氏の「東京以外のスタートアップが資金調達をする上で気をつけたほうが良いこと・コンタクトする際に、しておいた方が良いことはありますか」との問いに

古城一番効果的だと思うのは信用のある人のクレジットに乗っかること。ツイッター上には、結構な数の東京のSU関係者がいます。また、会社の問合せフォームもあるので、私もそこから相談を聞くことも多いですが、その相談内容だけでは、どういった人なのかは本当の所、わからないです。
しかし、SNSだとその人の周りが可視化されているので、分かりやすい。もしツテがあるのであれば、そのクレジットを使うことをお勧めします。
世古レファレンスも良いですが、シード期のSUは直接飛び込んでいただくのが一番いいと思います。問合せフォームはすべて見て、その上で面談をしています。
ただ、SNSも重要で、例えばトップティアのVC情報等、有益な情報が流れています。そういった情報を掴んだ上で、戦略的にどのVCから面談をするかなど、順番やゴール設計をしっかり組み立ててから、実行に移して欲しいです。最初の出資者が誰なのかは、本当に資本政策上重要だと思うし、100社当たるくらいの気持ちで!

〇 小さくまとまるな!

自身でこれまで研究開発型スタートアップのCFOとして、また現在はVCとして活躍している観点から、長野さんからは、

長野地方という面でいえば、目標資金がどうしても東京と比べると小さくなってしまうことがあります。結果、その調達資金の範囲で事業を行うということになり、決して間違っていないが、小さくまとまって欲しくないです
国内だと、IPOが主な出口になっているが、世界を見渡せば、M&Aも大きな出口です。特に研究開発型のSUには、選択肢の一つとして、視野に入れてもらいたいです
信じられない程、多額の資金を持った人が世界にはいます。きちんとビジョンがあれば、そういった方とつながり、共感してもらうこともきっと可能だと思います。事実スタートアップとしての経験の中で、「このお金で同業種であるテスラを倒しにいってこい!」と海外の財閥の方から大きな出資金額の提示がありました
そういった夢のある話もあるので、決して小さくまとまらないで欲しいと思います。

〇 チーム作りは Try & Try

牧野氏から、スタートアップが初期に出資を受ける際の重要項目の一つである、「チーム作りの方法について」の問いに、

高橋元々は研究所内のベンチャーとしてスタート。よって最初から研究者はいた状態であった。その後、自身でピッチしまくり、必要な人材は片っ端からナンパしました。笑
用意していた3分ピッチで「少しお時間いただけますか」と声をかけて自社の説明をしていました。なんとなく興味を持ってもらえたら、FBを見つつ、ハンティングできそうな時に目を皿にしています

國重前の会社のメンバーが創業当初からジョインしてくれていました。後は東京のメガベンチャー出身者が中心です。あえて関西に絞らなかったのが、良かったのかもしれません。
あとはスカウトを送ったり、人材紹介やヘッドハンティングなど、できることは何でもやりました

人羅今は、すごく優秀なメンバーに囲まれているが、創業時は限られたメンバーで事業を進めていくしかありませんでした。
チーム作りはずっと思考錯誤し、そして苦労して、最近やっとキーマンが揃ってきました。最初は、とんがった人材を入れてみたが、社内で大モメになるなど、アホなことをした時期もありました。
今は、社にとって優秀な人の仮説検証を行い、その上で、欲しい人材を採用するための面接を行うようにしています。今はこのアプローチで比較的良い人材をうまく確保ができています

〇 京都のスタートアップは「ガチ」で「面白い」

牧野氏から、「京都のスタートアップから東京のVCに伝えたいことは」という問いに対して、

人羅京都はおもしろいディープテックのSUが多くあります。当初は投資してくれない企業でしたが、時間をかけて、少しは期待してもらえる企業になってきました。うまく思考錯誤しながら成長していけるので、そういった京都のスタートアップをVCの方々にも応援して欲しいですね。

高橋京都または関西地方で起業するのはハードルが高く、実際に、身近に起業する人が少ないし、仲間も少ないし、情報も少ないです。なのでふわっと起業する人は少なく、ガチ勢が多いと思うし、すごくまじめな人が多いです
また、やっと京都は牧野さんみたいな人がいて、京都の中でもコミュニティーが出来てきたと思います。

〇 VCから京都のSUに期待すること

古城京都にはいい人材・シーズが眠っていると思っています。その良いところを積極的に発信していって欲しいです。引っ張り上げていきたいと思っているので、是非ご連絡いただきたいです。

世古期待というよりお願いです。京都を中心におもしろい人、技術があるのに、ちゃんとご支援できていないです。積極的にご連絡いただいて、支援していきたいです。

長野京都は独自の技術・メンタリティーを持っていると思います。
核としての技術を持ちながら、京都に居つつ世界に出ること、また京都からユニコーンが創出することに携われるよう一助になれればと思っています。

 

(レポート作成:京都知恵産業創造の森 スタートアップ推進部 川口 高司)

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