EVENT REPORTイベントレポート

Kyoto Startup Challenge / Seminar ①-「スタートアップ、ベンチャーキャピタルとは」-(2021/4/28開催)

京都知恵産業創造の森では、京都におけるスタートアップの創業をサポートするために、起業に必要となる知識を体系的に学ぶことができる4回シリーズのセミナーを開催している。
第1回目となる今回は「スタートアップとベンチャーキャピタルとは」をテーマに、ベンチャーキャピタリスト(以下VC)であるTLMの木暮圭佑氏を講師に迎え、スタートアップやVCについて語っていただいた。

※動画は以下からご覧ください。
https://youtu.be/YPjvFDNLmbQ

(講師)
TLM  General Partners 木暮 圭佑氏

講師自己紹介

 木暮さんは、2013年の大学在学中に、フルタイムでEast Venturesにおいてインターンを経験。そして、それから2年後の2015年、VCとして独立し、TLMを設立。自身のことを「オタク気質」だと語る木暮さんは、昔から海外のビジネスやサービスに詳しく、その知識は今の仕事に結びついているのだそうだ。
 また、VCとして具体的にどのような形で起業家と接点を持つのか、ということに関して、「7、8割は紹介です。残りの2割はFacebookやTwitterのDM。VCは起業家と比べて数が少ないので、連絡をするよりも、連絡をもらうことの方が多いですね。ちなみに東京以外の会社にも投資していますよ。」と語った。

〇 スタートアップってなんだ?

 スタートアップの定義について、「エクイティ(出資)、もしくはお金に対するレバレッジを駆使することにより、大きくリスクを得て、リターンを返し、会社を大きくすることです。」と木暮さんは語る。
 また、スモールビジネスとの違いについて、「スモールビジネスは、毎年そこまでの成長は求められませんが、スタートアップは大きな成長が必要となってきます。できれば、次の年は3~10倍の規模の成長が欲しいところです。」と語った。
 大きな成長には必ずリスクが伴う。スタートアップはリスクを恐れず、いかに上手くビジネスモデルを形成するかが、大切になってくるのだろう。

〇 VCってなんだ?

VCについて、二つの項目を立てた。
1つ目、VCとは「お金を出す仕事」。
「VCは企業に対して、お金を貸しているわけではなく、投資しています。投資する代わりに、その会社の株の何%かを貰うことによって、その会社がM&A(買収)、もしくはIPO(上場)した際にその株を売り、利益を得ているのです。」
また、融資との違いについては、
「融資と違って、 VCはその会社の株を保有しています。つまり、経営に対して口を出す権利を与えてもらっているとも言えるでしょう。なので、株を売ることも買うことも互いの合意が必要になってきますね。」
と語った。
そして2つ目、VCとの投資契約を「結婚or悪魔の契約」だと言う。
「VCは10年以内に株を売却しなければいけないため、スタートアップとVCは10年間顔を合わせ続けなければいけません。これは結婚のようなものです。さらに、スタートアップは株を保有しているVCから、毎回経営に口を出される可能性があります。毎回耳が痛いことを言われるかもしれないと思うと、まるで悪魔の契約のようですよね。なので僕からのアドバイスとして、スタートアップのゴールがM&A、もしくはIPOではない場合、VCから投資を受けるのはやめておいたほうがいいかもしれません。

〇 どんな人が成功するのか

「人」をテーマに4つのポイントを挙げた。
①気合のある人
「若くても気合で大人に勝てる人は重要視されます。VCからしても、スタートアップの持つ熱量や気合は、求めるもののひとつです。」
②頭がいい人
「これは学歴ではなく、答えのない問いを考え続けることのできる人のことを指します。スタートアップに正解はありません。それでも、常に正解を導き出すために、もがくことができるかどうかが大切です。」
③人を惹きつけられる人
「人を惹きつけるためには、まずちゃんと質問をすることが重要です。自身が何を課題として持っているかを明確にした上で、その解決策を求めるために周りの人たちに適切に質問をすることで、自身のことを魅力的だと思ってもらうことができます。何をするにしても、初めはわからないことだらけです。そんな時、それを如何に何人に質問できるかによって、人を惹きつけることができるかが決まってくると思います。」
④運のある人
「運も成功するかどうかに作用します。自分のマーケットに競合がいるかどうか、例えば今ならコロナ渦の煽りを喰らってしまうかどうかは運次第だと言えます。」

〇 初期どうやって成功するのか

創業期の会社を中心に投資している木暮さんは、創業初期にどうやって会社が成功するのかについて、4つのポイントを挙げた。
①良いプロダクトを作っているかどうか
「自分の目指しているゴールに対してのオペレーションも含めて、プロダクトだと思っています。使う人たちが満足する良いプロダクトを作っていくことが大切で、プロダクト自体が良くないと、せっかく買ってくれたユーザーが購入後にやめてしまう(離れてしまう)んです。買ってもらえるように、良いセールスをすることも大事ではありますが、良いプロダクトがある前提でセールスをすると長期的に上手くいくでしょう。」
②錯覚資産を築くかどうか
「良いプロダクトを作った次の段階の話になるのですが、起業家として次のレベルにいかなければならない時に、他の人からすごいと思われている部分を上手く見せることができると、錯覚資産を築くことができます。ただ、すごいと思われたことで承認欲求を満たしてはいけません。そこで自身の事業に対する学びをいかに増やすことができるかどうかが大切です。」
③モメンタムを作っているか
「スタートアップは要所要所の成長が大事なのですが、その中に爆発的に伸びるタイミングが存在します。自分で『成長している!』と感じることを何個作れるかが重要で、先ほど言ったように他の人にすごいと思われたことを爆発的に成長させ、錯覚資産をどんどん作っていけるといいですね。爆発的に伸びている時の成長率も大事だとは思いますが、それをいかに会社の強みとして使えるかが大事だと、僕は思います。」
④自分を高められるか
「例えば、自分の仲の良い人のスタートアップが上場すると、それに刺激を受けて自分も頑張ろうという気持ちになります。このような視点はとても大切で、さらに自分のゴールを高く設定することで、常に自分を高め続け、どんどんチャレンジしていくことができます。このような環境が作れるかどうかは成功するにあたって重要なポイントになってくるでしょう。」

〇 質問コーナー

ここまでの話を受け、多くの質問が寄せられた。

Q:why youは起業していく上でなぜ必要なのでしょうか?

「まずwhy youの説明をすると、why youとは『なぜこの事業をやるにあたって、あなたでなければいけないのですか』という問いのことです。これに関しては、自分がなんらかの課題を見つけて、その事業に取り組むのであれば無くてもいいと思います。しかし、本当に辛い時why youがあると強い意志ができ、諦めずに続けることができるので、僕はVCとして見ている要素の1つではありますね。自分がやりたい事業に対して勝ち筋が見つかっていたり、他人が見つけていないアイデアを持っている場合、それはwhy youになり得ると思います。」

Q:投資するかどうかの判断の決め手はなんですか?

「周りが見つけていない課題、つまり隠れた真実を持っているかどうかです。起業家しか見つけていない隠れた真実を持っていると、VCは投資をしたくなります。また、それを証明できるような小さなロジックがあるといいですね。例えば、ちゃんとユーザーにヒアリングをして、ターゲットの年齢層の生活環境を踏まえた上で、このようなサービスを行うと伸びる、と言ったような仮説があると非常に魅力を感じます。」

Q:今大学生で、将来起業をしようと思っているのですが、アイデアが思いつかず、何から始めたらいいのかわからず困っています。何かアドバイスはありますか?

「アイデアを見つける方法は2パターンあって、1つ目は自分の課題から見つける場合。日常生活で『こんな風になればいいのに』と思ってはいるけれど、それに対しての解決策がまだ誰も出せていないアイデアのことです。日常生活の不安に対してセンシティブになるのは、アイデア出しの1つとしてありだと、僕は思っています。

2つ目は、すでに伸びている海外サービスの中から見つける場合。海外の伸びているスタートアップ等を調べ、その中で自分の興味のあるもの、もしくは日本でもできるものを探す方法です。これに関して気を付けなければいけないのは、日本と海外とではスタートアップの規模や環境が全然違うという点です。日本では成長しているスタートアップでも、海外ではそこまでの規模の成長ではない場合も多いので、注意してください。」

Q:最近特に面白いな、出資したいなと感じたサービスはなんですか?

「チャレンジャーバンク等の銀行をどういう風に変えていくか、というサービスは面白いと思いました。また、政治系のスタートアップも関心を持ちますね。」

Q:地方の起業家はどうやったらVCに会えますか?

「メールやDMなどの営業の際に、いかに面白くアピールができるかどうか、もしくは人に紹介してもらい、予めある程度のVCからの信頼を得ていたら、ですかね。」

Q:日本のスタートアップ環境が上場などで盛り上がるにはどういうものが必要ですか?

「スタートアップは上場するタイミングで、大きな金額を狙っていくべきだと思います。また、日本のマーケットは大きいものの既存の会社が強いので、外貨を稼ぐことも大切だと思います。」

Q:スタートアップで最初の一歩を踏み出す際に大切なことはなんですか?

「とにかく『気合』ですね。崖から落とされるかのように、無理やり一歩を踏み出してみるのもありだと思いますよ。」

Q:経験のために就職してから起業する、という方がいらっしゃいますが、前職の経験は必要になってくるのでしょうか?

「前職の経験は強みになると思います。基本的にこの業界では使えるものは何でも使います。前職の経験しかりネットワークしかり、使えるものがあるのなら使うべきだと、僕は思います。」

 

約一時間半にわたって行われた今回のイベント。

京都知恵産業創造の森スタートアップ推進部では、京都のスタートアップエコシステムの普及を主なミッションとしている。しかし、京都ではスタートアップの情報に生で触れる機会は、残念ながら今のところそこまで多いとは言えない。このセミナーを通して、起業や事業展開の参考にしていただけると幸いだ。

 

(レポート作成:澤村 花霞)

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