イベントレポート
Kyoto Startup Monthly Discussion #01レポート(2021/6/23開催)
「Kyoto Startup Monthly Discussion」は、京都から若い世代の起業家を創出するため、京都で活躍する先輩起業家とのパネルディスカッションや交流を通して、起業に対するハードルを下げ、京都から起業しやすい世の中をつくっていくことをミッションとしているイベントです。
今回は「持続可能な事業の作り方」をテーマに、株式会社ローカルフラッグ代表取締役の濱田祐太さんをゲストに迎え、モデレーターの桺本さんを通じてお話をお伺いしました。
※左:モデレーター 桺本頌大さん、右:株式会社ローカルフラッグ代表取締役 濱田祐太さん
京都府与謝野町のローカルベンチャーである株式会社ローカルフラッグは、「持続可能な地域づくり」を目標に、地域の旗振り役として、地域活性化・地域課題の解決に尽力されると同時に、与謝野町産のホップを使用したクラフトビールの醸造にも取り組まれています。天橋立で環境課題となる牡蠣殻をビール製造における水質調整や濾過で使用し、飲めば飲むほど海が綺麗になる、と開発されたクラフトビール「ASOBI」は大好評で、将来的には自社のビール工場を立ち上げ、自社製造への切り替えを目指して活動されているそうです。
桺本さん:濱田さんのように地方に特化し、最終的にはIPOを目指しているような学生起業家は珍しいと思います。このような起業をしようと思ったきっかけはなんですか?
濱田さん:なぜ起業に至ったかというと、『地域を良くしていきたい』と考えた時に、関わり方は様々ですが、若いうちに何か一石を投じるためには起業をすることが重要だと思ったからです。自分が達成したいことは地域の創生や活発化。そのためには地域経済を活発にさせる必要があります。だからその地域でビジネスを頑張っていく、というのは避けては通れない切り口で、株式会社で起業する必要がありました。
桺本さん:なぜ株式公開を目指しているのですか?
濱田さん:地域活性化を志す会社である以上、透明性があって、公の器にならなくてはいけません。地域の人々から応援して頂くためにも、将来的には株式を公開したいと思っています。
桺本さん:周囲から応援してもらうために、どのようなことを心がけていますか?
濱田さん:自分の活動を知ってもらうことは、とても大事だと思っています。イベントにもできるだけ参加し、自身のしていること、やりたいことを伝えていく、というのは心がけていますね。もう一つ重要なのは、素直に他人とコミュニケーションを取ることです。特に学生起業家は若者の力だけでなんでもやろうとせず、様々な年代の人とコミュニケーションを取る、ということはとても大切です。わからないことは聞いて、教えてもらったり、アドバイスをもらう。それを心がけると、周りの人に応援してもらえたり手伝ってもらえたりするようになりますよ。
桺本さん:確かに、あまり自分を偽らず、素直な気持ちでいることは大切ですね。それは学生の特権でもありますし、そこをフル活用できればいいですよね。
桺本さん:クラフトビール事業をやろうと思ったきっかけはなんですか?
濱田さん:地域でベンチャーをやっていく上で大事なことは、地域課題を解決しながら商品開発をしたり、事業を作っていくことです。そう考えた時に、牡蠣殻問題をビジネスとして取り組めないかと思ったのがきっかけでした。そこから何かキャッチーで面白い解決策はないか、と悩んだ結果、与謝野町のホップと牡蠣殻を繋ぎ商品開発をすれば、楽しく課題解決ができるのでは、とクラフトビール事業を始めることになりました。地域を活性化するために、自分たちも何かリスクを負ってビジネスを行っていく、というスタンスが地域からの応援を得るために重要なことの一つだと思っています。
桺本さん:ビール開発をするにあたって、苦労したことはありましたか?
濱田さん:構想を開始してから開発まで一年はかかりました。コンセプトやどこに作ってもらうか、など悩んだことは色々ありましたが、一番決まらなかったのは商品名です。初めに考えた名前はコンセプトが伝わりにくい、ということでリリースの2ヶ月前に考え直すことになってしまったんです。最終的に、遊び心を持って前向きな気持ちになってもらうための飲み物ということで、『ASOBI』という名前になりました。
桺本さん:自社でビール工場を持ち、市場に広く流通させるにあたっての戦略は?
濱田さん:大きく分けて二つあります。一つは国産の生ホップを使って通年でビールを作っているブルワリーはまだ少なく、通年での生産は優位性の一つであるため、安定して供給していけるようすることです。もう一つは、クラフトビールの良さである多様性を活かすことです。自社工場を作った暁には商品開発はもちろん、プロトタイプを作り続けるラボのような位置付けにし、自社の店舗やECサイト、特にやってみたいのはサブスクでの商品提供を行い、お客様からレビューを頂き、市場の好みを把握することによって流通に乗せていきたいと考えています。プロトタイプを使って商品開発をしていく、ということとOEMの力を借りつつ安定供給をしていく、というこの二点にしっかりと力を入れていけたらと思います。
桺本さん:クラフトビール以外はどのような事業展開をされていますか?また、将来的な目標はありますか?
濱田さん:例えば、地域に就職した新卒の合同社員研修を企画・実施したり、行政と一緒に移住・定住の支援プロジェクトを行ったりと、起業や事業承継を促進するスクールやセミナーを行なっています。将来的には、地域の旗振り役になれればと思います。自分たちがしっかりとリスクをとってチャレンジしていく姿を町に見せることによって、新たに地域や事業を起こしていく起業家や後継者が増えていき、さらなる事業を伸ばして行く。そういったことで、事業の中で社会課題を解決していけるような地域を作っていきたいと考えています。地域をフィールドとして事業をするプレイヤーが増えてくれれば嬉しい限りです。
桺本さん:昨今、若者がどんどん地方離れしている原因として、地域に魅力を感じられない、というのがあると思います。ローカルフラッグさんの活動はそこの魅力を作って行く、という重要な役割なのですね。
桺本さん:最近の具体的な事業事例はありますか?
濱田さん:京都府の振興局と連携し、学生向けの地域での起業を応援するプログラムを立ち上げる予定です。学生たちが自分で考えたことで収益を伸ばし、その地域に持続的に関われる状態を作ることが重要です。まず、その地域に持続可能な形で何度も通えるような状態を作り出すところからチャレンジしていき、そこから課題ややるべきテーマを見つけ、本格的な事業作りに繋げて行く。このような切り口から三ヶ月間でそういった状態を目指していきます。事業案を作るプログラムを地元の事業者や、学生起業家をゲストに迎え開催予定です。興味のある方はぜひ参加してもらえればと思います。また、他に本格的に起業を考える方に向けたプログラムも開催しています。『地域で何かする』というタネを撒くことは、起業に興味がある人たちを地域として応援して行く上で大事ですし、『起業する』と決断された方を全力で応援し、サポートすることも非常に大事なことだと考えています。
桺本さん:起業を志す若者や学生にアドバイスを!
濱田さん:20代、という時間は本当に有限で貴重です。なのでぜひ、やりたいな、と思ったことがあればどんどんチャレンジしていってください。とりあえず就職してから起業する、という就活生にたくさんお会いしますし、僕自身も当時はそう考えていました。しかし、起業してから僕が思ったのは、就職していたらできない体験や機会をいただけているな、と感じますし、20代前半でこんな機会をいただけるというのは起業ならではの醍醐味だということです。一番やりたかったことを新卒でやらせていただける、というのは本当にありがたいことだと僕は思います。キャリアの選択肢の一つとして、『起業』というのを考えていただければ嬉しいです。もし、起業に興味があるのなら、学生起業家の下にインターンシップに行くのがおすすめです。その場の空気感を感じることはいい勉強になりますよ。お互い、頑張りましょう!
約一時間にわたって行われた今回のイベント。生まれ育った地域への愛着や愛情をベンチャーとしてビジネスで展開して行く。このような地域貢献は実に画期的で非常に有効的であると思います。
学生や若者がやりたいことを具体的に実現するために、「起業」は大きなチャンスです。自分の持つ想いや考えを大切にし、それをどうビジネスとして実行して行くのか、を考え行動に移すことは自身の大きなステップアップにもなるでしょう。
(レポート作成:澤村 花霞)