EVENT REPORTイベントレポート

Kyoto Startup Challenge / Seminar ③-「創業初期の仲間の見つけ方」-(2021/6/18開催)

京都知恵産業創造の森では、京都におけるスタートアップの創業をサポートするために、起業に必要となる知識を体系的に学ぶことができる4回シリーズのセミナーを開催している。
第3回目となる今回は「創業初期の仲間の見つけ方」をテーマに、ベンチャーキャピタリスト(以下VC)であるEast Venturesディレクター毛利洵平氏を講師に迎え、スタートアップやVCについて語っていただいた。

(講師)
・East Ventures ディレクター 毛利 洵平 

〇 共同創業について

スタートアップは起業する際に、1人で立ち上げるか複数人で立ち上げるかの二つの選択肢がある。一体どちらがいいのだろうか。
「これに関しては、正解はありません。会社を設立、登記する際に複数人いなくてはいけない、という話をメディア等で見聞きしますが、自分はそうは思いませんね。登記の時点では1人でもいいと思っています。一番大事なことは、自分の環境や周りの環境、やろうとしている事業から選択することです。若い人だと、インターンをしてから起業する人や、起業サークルから起業する人がかなり多く、そういうところで仲間を見つけ、一緒に起業するパターンが増えてきています。型に捉われず、会社のスタートを遅らせないことが大切です。」

◯創業者がエンジニアではない場合の仲間集め

スタートアップにはエンジニアの存在は非常に重要である。創業者がエンジニアではない場合、どのようにしてエンジニアを募ればいいのだろうか。

・起業前の場合

「自分でエンジニアの勉強をするべきです。創業者がプロダクトづくりに関する知識を持っていたほうが、後々楽になってきます。事業内容によってはそんなにエンジニアリングが必要ではなかったり、最近はエンジニアではない人でもある程度プロダクトが作れるサービスが増えていたりするので、そういった点を創業初期に活用すれば、エンジニアの知識がそこまで無くてもプロダクトづくりに参加できます。とにかく深く無くていいので、自分でできる範囲で勉強するのが一番効率的です。」

・起業後の場合

「会社をもう起業していて、自分で勉強する時間がないような人はとにかく身の周りにいるエンジニアに声をかけるしかありません。最近のトレンドとして、YOUTRUSTOffersなどのサービスを活用し、副業のエンジニアに仕事をお願いしてプロダクトを作って行くようなケースも増えています。フルタイムのエンジニアを雇用するのはとても大変でコストもかかる。こういったサービスを活用し、副業で手伝ってもらえる人を見つけて効率よくプロダクトを作るのもありだと思います。

しかし結局、自分でプロダクトの良し悪しを見極めるためにも、ある程度エンジニアの勉強は必要ですし、エンジニアと出会える環境に起業前からいられるかどうかが重要になってきます。つまり、起業前の準備はとても大切なのです。具体的な準備例として、インターンや起業サークルへの参加、スタートアップイベントにスタッフ等での参加、などが挙げられます。エンジニアが見つけられなくて困っている方はそう言ったコミュニティに入って行くと良いかもしれません。」

◯創業初期の役割について

「共同創業者が集まった後の役割分担はとても重要です。初期のスタートアップは、資金調達の金額もそこまで多くなく、資金的にも時間的にも有限な状況なので、プロダクトづくりに注力することがほとんどです。なので、結局、非エンジニアの人でもプロダクトづくりに関わらなくてはいけません。例えば、あるCEOがプロダクトづくりを全てエンジニアに任せ、自身はバックオフィスなどプロダクトづくりとあまり関係のない仕事を中心にしていたとします。この時期のスタートアップで見れば、プロダクトづくり以外はあまり重要ではないので、徐々にエンジニアの方が決定権を持ち始めてしまいます。組織内でCEOじゃない人の求心力が高くなると、パワーバランスが崩れ内部崩壊してしまいます。そうならないためにも、とにかく初期はプロダクトづくりにフォーカスしてください。非エンジニアのCEOでもプロダクトのために多少なりともエンジニアリングをしたり、ユーザーインタビューや営業などエンジニアリング以外でプロダクトづくりにコミットしていくことが大切です。」

◯共同創業者と株式

複数人で会社を立ち上げた時、どのくらいの株式比率にすればいいのだろうか。また、後から入ってきた人にどう配分すればいいのだろうか。

「僕は、例えば2人で始める時に1:1にするのはあまりお勧めしていません。なぜならこの比率の場合、何か起こった時に必ず2人で合意をとって進んで行かなくてはならないからです。最終的にはどちらが決め、責任をとるかということを決めておいたほうがスムーズですね。

また会社を設立してから上場するまでの株式等の使用計画である資本政策は、一度失敗してしまうとなかなか元に戻せないので慎重に。とは言ってもなかなか経験がないと思うので、先輩起業家やVCに話を聞くのが一番確実で早いですよ。

ここから先は助言なのですが、複数人で株を持ち合って創業する場合は必ず創業者間契約は結んでおいてください。これは、創業者と揉めてしまった場合、株をどういう風に取り扱うのかというのを創業時点で決めておくことです。創業時の事務的な仕事の一つとして済ませておいてください。」

◯成長期/拡大期の採用

 ここから先は創業期の先、成長期/拡大期の話だ。

「まず初めに採用の軸を決めることが大切です。この軸がないと、雑に人選してしまったり、ハードルが下がってしまったりするのです。ミッションやビジョンなどの組織を強くするための要素を作り、それに沿った採用の軸や評価基準をしっかりと統一しておくことが重要です。また、幹部クラスの採用であれば、軸プラス、リファレンスチェックなども活用してみてください。採用で大事なことは、人を拡大して行く前にどれだけ準備ができているかです。人が必要になってから動き出すのではなく、拡大期に向けて日頃からいかに準備できているかどうかは重要になってきます。」

◯共同創業者の変化

「会社が拡大・成長期に入った時、共同創業者との変化は必ず起こります。共同創業者が上場までCTOCOOでいるケースは実は少ないのです。なぜなら、会社が大きくなるとだんだんプロの仕事が増えてきます。初期は人数が少ないので、色々できる人や臨機応変な人がかなり重宝されるのですが、会社が大きくなってくると要所要所で成果を出すようなプロフェッショナルが必要になってきます。そういう人を途中から雇い、幹部に据えるパターンが多いのです。プロフェショナルをCTOCOOにする場合、ずっと一緒にやってきた共同創業者を異動させなくてはいけません。そういった、ある意味降格のような辛い話をしなくてはいけない時、創業者は悩み、とてもストレスが溜まることでしょう。日頃のコミュニケーションを大切に、納得して会社の変化にお互い対応していけるような関係性を共同創業者と築いていければいいですね。

 

◯質疑応答

 ミーティング形式で行われた今回のセミナー。参加者から多くの質問が飛び交った。

Q:Webでのサービス開発をするにあたり、自らエンジニアリングできるように学ぶ場合、何から始めればいいですか?

「そこまで高度な技術を要さないのいなら、プログラミングスクールに参加するのもありだと思います。その際、とりあえず学びに行くのではなく、何かゴールを持って学びに行く方が効果的ですよ。」

Q:法律関係が不安なのですが、外部の方へ法律の相談を方がいいですか?

「どの事業をするかにもよりますが、法規制が厳しいジャンルに関しては、弁護士への相談は必須です。きちんと弁護士さんと二人三脚でサービスを作っていってください。それ以外のジャンルで言うと、競合がすでにあれば、そこがサービスをどのように法律に触れないようにやっているのか、というのを調べてみるのもいいと思いますよ。初期のスタートアップはどれだけやるべきことに集中できるかが重要です。法律などの不安要素は少しでも排除しておいた方がいいでしょう。最近はスタートアップ向けの弁護士さんも増えてきているので、小さな質問であってもラフに相談してみてください。また、法律とは少し話が逸れますが、もしサービス業をするなら商標は気をつけておいた方がいいですよ。サービスを拡大して行くようなタイミングでは、しっかりと商標をとるようにしておいてください。」

Q:どのくらいの粒度で役割をメンバーに渡すのがいいでしょうか?

「持っている強みがそれぞれきれいに分かれているならば、各自の持ち場に関してはその人に権限を与え、何か問題が発生した場合社長が決めるのが良いと思います。共同創業の場合、迷うと一気に決まらなくなるので、最後にどちらが決めるか、を株式の保有比率やCEOの権限等で決めておくとスムーズですよ。」

Q:社会人から起業する場合のアドバイス等ありますか?

「事業に集中できるくらいの給料は出してください。前職よりも収入は落ちてしまう人が多いとは思いますが、下げすぎてはいけません。特にご結婚されていた場合、そのご家族からの協力は精神的にもすごく大きいものになってきます。そのため、自分の首を絞めるほどの給料にはしてはいけません。これは創業メンバーだけでなく、他の社員も同様です。皆さんで適正だと思う給料を決めてくださいね。また、スタートアップは長期戦になります。長期で考えた時に、自分の精神状態を健康に保つのはとても大切なことです。健康状態が保たれてさえいれば、何か問題が発生しても前に進むことはできるからです。長期で戦える環境を作って行くことはとても重要です。」

約一時間半にわたって行われた今回のイベント。

京都知恵産業創造の森スタートアップ推進部では、京都のスタートアップエコシステムの普及を主なミッションとしている。しかし、京都ではスタートアップの情報に生で触れる機会は、残念ながら今のところそこまで多いとは言えない。このセミナーを通して、起業や事業展開の参考にしていただけると幸いだ。

(レポート作成:澤村 花霞)

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