EVENT REPORTイベントレポート

Kyoto Startup Challenge / Seminar ④-「スタートアップにおけるファイナンス」-(2021/7/2 開催)

京都知恵産業創造の森では、京都におけるスタートアップの創業をサポートするために、起業に必要となる知識を体系的に学ぶことができる4回シリーズのセミナーを開催している。
第4回目となる今回は「スタートアップにおけるファイナンス」をテーマに、日本政策金融公庫上席所長代理の村上尚史氏と、ベンチャーキャピタリスト(以下VC)であるW Ventures代表パートナーの東明宏氏を講師に迎え、スタートアップやVCについて語っていただいた。

(講師)
・日本政策金融公庫 上席所長代理 村上 尚史氏
・W Ventures 代表パートナー 東 明宏氏

 

◆創業融資について(日本政策金融公庫)
〇 融資制度の紹介

日本政策金融公庫から3つの融資制度の紹介があった。

①新規開業資金
新たに事業を始める方または事業開始後概ね7年以内の方
創業する上で実現可能な創業計画を策定しており、十分遂行できると認められる方のみ適用できる。

②女性、若者/シニア起業家資金
女性、または35歳未満か55歳以上の方であって、新たに事業を始める方または事業開始後概ね7年以内の方。

③新創業融資制度
他の融資制度と組み合わせて無担保・無保証人でご利用いただく制度(事業計画の確認あり)。新たに事業を始める方または事業開始後税務申告を2期終えていない方で次の自己資金要件を満たす方。新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を1期終えていない方は、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金(事業に使用される予定の資金をいいます。)を確認できる方。

「制度はたくさんありますが、悩む必要はありません。お申し込みいただいた後に、皆様にとって一番条件が良い制度を担当者が提案させていただきますので、軽く把握しておいてもらえれば、と思います。覚えておいていただきたいのは、お申し込みの際、無担保無保証人を希望するのか、連帯保証人を立てるのか、担保を提供するのかという希望だけ固めておく、という点のみです。」

◯補足説明

創業企業の評価のポイントは2つある。

経営者としての能力が備わっているか
「経営者としての素質とは、やりたいこと・できること・必要とされることの3つが押さえられているかどうかです。具体的には、まず困難を乗り越えていける熱意・信念・志があるか(やりたいこと)、そしてその熱意を実現するための必要なスキルが身についているか(できること)、さらに、そのビジネスが成立するニーズがあるか(必要とされること)ということを考えるのが重要ですね。」

創業計画書が実現可能なものか
創業計画書は自分のために作ってください。自分が考える事業構想を整理し、事業化するための課題と『やるべきこと』を明確にすることが大切です。創業計画書を作るための準備としては、情報収集・弱点の理解と克服・従業員の確保・家族のサポートの4つ。これらを念頭に、策定していただければと思います。」

 


◆ファイナンスと事業ピッチ(W Ventures)
◯講師紹介

グロービス・キャピタル・パートナーズにて約6年間ベンチャー投資に従事していた東明さんは、その後独立しW Venturesを起業。VC歴は8年に上る。W Venturesは基本的にコンシューマー向けのビジネスを行うスタートアップに投資している。

◯エクイティ*資金調達を検討する前に

「前提として、資金調達をすることが成功ではないことを覚えておいてください。ご自身のビジネスに本当に資金調達が必要なのか、デッド・ファイナンスとエクイティ・ファイナンスのどちらがいいのか、をしっかり考えた上で判断してください。」
*エクイティファイナンス:企業が新株を発行して、事業のために資金を調達すること。一方、デッドファイナンスは、金融機関からの借入金(融資)のこと。

・VCを入れるとはどういうことか?

「基本的に10年で決着をつけなければいけない、という制約ができます。ご自身のビジネスが10年ではゴールできない、と思う方はVCからの調達は向いていない、と考えたほうが良いでしょう。」

・エクイティの資金調達は慎重に

「エクイティの資金調達は結婚と同じだと言えます。結婚は簡単に入籍できますが、離婚するとなると持っている責任も増え、難しいですよね。エクイティも同じで、一度調達してしまうと、株主から株を買い戻すなど、逆戻しすることが難しいんです。なので、調達するかどうかは慎重に決めてくださいね。」

 

ここから先は事前に募集し、集まった多くの質問に答えていく質疑応答形式でトークが行われた。

◯資金調達するには

Q:VCに会う方法として、一番会える可能性が高いのは?

「紹介で会うことが一番多いですね。効率的にVCと会うのなら、共通の知人に紹介してもらうのがおすすめですよ。」

Q:VCに会うタイミングはいつ頃がいいですか?

早ければ早いほど良いと思います。VCとは付き合う長さが長いほど、互いの相互理解が深まるので、エクイティ調達を考え始めたら、とりあえずVCが実施している事業相談会などから相談することなどをおすすめします。」

Q:VCと資金調達の打ち合わせを入れるタイミング

「大体、数千万の資金調達の場合は、3ヶ月前くらいを目安にしてください。また、1億円を超えるぐらいの資金調達をする場合は、半年前ぐらいからをおすすめしています。金額に応じて資金調達にかかる時間が変わることを把握して、タイミングを考えるといいでしょう。ただ前にもお話した通り、それよりも前からコミュニケーションしておけるとより良いと思います。」

◯資金調達の条件について

Q:調達額の決め方とは?

「会社によって全然違うので、事業計画を立てていく上でどのくらいの金額が必要なのか、というのを考えるのがファーストステップです。その次に上場やM&Aのタイミング等、少し先の将来を考えてください。計画は変わるとは思いますが、そこまでにいくらお金がかかるのか、というのをまず、考えることが重要です。」

Q:株はどの程度放出して大丈夫?

「上場、M&Aのタイミングで株を何%持っていたいか、そこまでに何回資金調達をして、どのくらいずつ株を放出すれば最後に辻褄が合うのか、ということを考えるとよいのかなと思います。そしてそれに応じて企業価値のステップを作っていきます。基本的には資金調達のタイミングで、一回につき10~20%放出するのが王道だと言われていますが、それが何回重なって、最終的に自分が何%持っているのかをシュミレーションすると良いのかなと思います。もちろん、何パーセント持っていたいかということよりも事業が成長することがまず大事だと思うので、変化はあるとは思いますが、考えてみることはよいのかなと思います。」

◯出資までのフロー

Q:出資が決まるまでの具体的なフローは?

「弊社の場合は社内で協議し、経営者によるプレゼンを経て、最終協議を行う、という3ステップで決めています。その中で具体的に協議していることは、このビジネスは本当にうまくいくのか、経営者としての素質はどうか、ということ。しかし、VCによってこのステップはかなり変わってくるので、出資を受ける際に必ず確認してください。」

Q:投資契約書とは?

「大きく分けて普通株式の契約と優先株式の契約の2つがあります。特に優先株は、比較的早い段階でも契約を結ぶことがあるので、覚えてもらえたらなと思います。優先株は、万が一、経営がうまくいかなかった場合の投資家側のリスクを軽減しており、起業家側にとっては普通株よりもバリエーションが良い状態で資金調達をすることができ、大きく分けて3つの条件が付いていることがあります。

1つ目は残余財産の分配権。これは、万が一、会社が清算することになった場合、残っている財産を優先的に投資家が回収する権利です。場合によってはM&Aの時にも適用されることがあります。

2つ目は強制売却請求権。何らかの要件を満たした場合、投資家と共に経営者が株を売るよう請求できる権利です。投資家は社長より保有している株が少ないので、M&Aなどのタイミングでこういった権利を活用して売却を請求することがあります。起業家にとっては経営権に関わるのでじっくり投資家とコミュニケーションするのがよいと思います。

3つ目は優先引受権。会社が希望する額よりも多くの投資のオファーが来た場合、優先的にその会社に投資できる権利です。

投資契約を結ぶ際は、このような3つも含め、細かい条項もしっかり確認して検討してくださいね。

◯出資を受けた後

Q:VCを入れるとどうなるのか

VCによってかなり違うので、ミーティングの頻度や進歩状況に対する口出し等にも差があります。私の例で答えますと、ミーティングは大体毎月一回ぐらいが多いでしょうか。会社によっては隔週の場合もあります。また、どのくらい会社にアドバイスするかはその会社と相談して決めています。ピポットに関しては、私は特に何も思わないですが、VCの中では意見がある人もいるのかなと思います。」

Q:次のラウンドには繋いでもらえるのですか?

「これもVCによって違います。私の場合はできれば次のラウンドも出資したいな、と思いますし、足りなければ他の投資家も積極的にご紹介します。」

◯その他の質疑応答

Q:W Venturesの投資領域であるコンシューマー向けサービスだと、店舗ビジネスが多くなってくると思いますが、店舗ビジネスは固定費等の出費により、なかなか投資しにくいかと思います。その点はいかがお考えでしょうか?

VCが店舗ビジネスに投資するというのは稀で、なぜかというとVCは線形で着実に成長する会社より、非線形で急成長する会社に投資したいと考えているファンドが多いからです。店舗を地道に作っていくようなビジネスは、日本政策金融公庫さんの融資制度のほうが合うかもしれません。一方で僕(W Ventures)は、店舗を持っていることによって、違うビジネスが展開でき、それは非線形に成長するのではないか、と考え店舗を持つビジネスにも投資しています。」

 ◯最後に

「経営者の仕事はお金や人を調達すること。お金の調達には多くの方法がありますが、調達先によってその性質は変わってきます。自身のビジネスにとって何が最適な資金調達の方法なのかを考え、かつVCの中にも様々な種類があることを理解してもらい、お金と人をうまく調達してもらえればいいな、と思います。
VCの選び方として1つ、僕からのおすすめはレファレンスを取ることです。私は投資家側が起業家を選ぶのではなく、起業家側が投資家を選ぶのが正解だと思っています。なので、採用と同じ感覚でレファレンスを取ってください。方法は、その投資家の投資先に話を聞きに行くこと。そこでいろいろなお話が聞けると思うので、それを参考に自分に合っているか、あっていないのかを最終的に判断してくださいね。」

 

1時間半にわたって行われた今回のイベント。
京都知恵産業創造の森スタートアップ推進部では、京都のスタートアップエコシステムの普及を主なミッションとしている。しかし、京都ではスタートアップの情報に生で触れる機会は、残念ながら今のところそこまで多いとは言えない。このセミナーを通して、起業や事業展開の参考にしていただけると幸いだ。

(レポート作成:澤村 花霞)

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