EVENT REPORTイベントレポート

Kyoto Startup Monthly Discussion #03レポート(2021/8/18開催)

Kyoto Startup Monthly Discussionは、京都から若い世代の起業家を創出するため、京都で活躍する先輩起業家とのパネルディスカッションや交流を通して、起業に対するハードルを下げ、京都から起業しやすい世の中をつくっていくことをミッションとしているイベントです。
今回は「京都でヘルスケアAIスタートアップをする理由」をテーマに、emol株式会社(以下emolCEOの千頭沙織さん、COOの武川大輝さんをゲストに迎え、モデレーターの桺本さんを通じてお話をお伺いしました。

 ※右側:emol株式会社CEOの千頭沙織さん、COOの武川大輝さん
  左側:モデレーター 桺本 頌大さん

 メンタルヘルスサービスのemolは、大学時代にメンタルを崩した経験のある、創業者の千頭さんの実体験から生まれたサービス。当時、人には怖くて悩みを相談できなかった千頭さんは、人ではない、信頼できる相談相手を求めていたそうです。そこから開発されたのが、メンタルを向上させるAIセルフケアアプリ。現在ではオーガニックのみで27万ダウンロードを突破しています。最近はエビデンスに注力されており、大学と共同研究を行ったり、自治体で実証実験を行ったりと活発に取り組まれており、今後は予防・未病・治療を一括で行えるメンタルサービス国内No.1を目指し、日々躍進されています。

桺本さん:ヘルスケアAIをやろうと思ったきっかけは?

千頭さん:私は芸術系の大学出身で、初めはAIや心理学など一切わかりませんでした。しかし、大学の時から起業しようということは決めていたので、卒業後、エンジニアの勉強をしまして、作りたいサービスを作りはしたのですが失敗してしまったんです。それからサービス案を考え直し、『自分が使いたいサービスを作れば、他にも使いたい人は一定数いるのではないか』という点から、AIを使い、人には話せない悩みをなんでも聞いてくれる存在、emolを作ることになりました。

桺本さん:完全にゼロの状態からプログラミングをやり始めた、ということですか?

千頭さん:そうですね、卒業するまではパソコンにおいてはデザイン系のツールしか触ったことがありませんでした。そこから勉強し、現在も私が開発を担当しています。最初emolを作った時は、私と武川2人だけで開発しました。

武川さん:僕も、エンジニアではなくデザイン系の人間です。僕と千頭は高校からの付き合いで、大学も同じ、そこから起業して現在は夫婦でもあります。悩んでいる当事者を一番近くで見てきたこともあり、少しでも悩みを抱える方々の助けになれればと、このサービスを開発しました。

桺本さん:エンジニアを探さず、自分でしようと思ったのは何故ですか?

千頭さん:大学では1人で作品づくりを行うことが当たり前だったので、人に頼む、という考えがあまりありませんでした。また、プログラミングは人に頼むとお金がかなりかかってしまうので、金銭的な面でも自分でつくろう、としか考えていませんでした。

桺本さん:でも、それが今はしっかり功を成していますよね。エンジニアではない人が1からAIを作っている、というのはかなり稀なケースだと思います。

桺本さん:関西でヘルスケアAIを行う理由は?

武川さん:創業から去年までずっと東京にいたのですが、そこから何故京都に来たのかと言うと、きっかけはコロナ禍になり、東京で高いオフィスを借りていても意味が無いな、と移転の話が出たことです。そこで、メンタルヘルスにおいて大切な『禅』のイメージがあったり、大阪出身の僕らが少し憧れていた京都に割と軽い気持ちで移転しました。京都にやって来てから、京阪神は非常にヘルスケアに対するサポート体制が手厚いな、と感じます。東京はやはり経済の町ですので、メガトレンドに関してはかなり進んでいるものの、ヘルスケアに関する研究開発においては関西が秀でていると思いますね。実際、弊社は東京にいた時よりも今の方がヘルスケア要素に力を入れています。

桺本さん:関西の中で京都を選んだ理由は?

武川さん:京都に本社がある、というのは海外の方がとても興味を持たれるらしく、東京にも張り合える町の力、と言うのをすごく感じています。実際に来てみると京都のみならず、京阪神のことが大好きになりました。

桺本さん:もしかすると、東京からヘルスケア関連のスタートアップを関西に誘致できるかもしれませんね。ゆっくり事業を成長させられる、という点では関西は良い環境なのかもしれませんね。

桺本さん:emolの経営戦略を教えてください。

千頭さん:まず、ヘルスケアサービスとしての信用を得たいと思い、行政で実証実験を行わせていただいております。そうすることによって、数多くあるヘルスケアサービスの中でも、行政が信頼するサービスとして、お客様から確実な信用を得ることができます。自治体によってはスタートアップとの取り組みに力を入れておられるところもあり、当時まだ東京にいた際は千葉県市原市さんが行っていたプロジェクトに応募し、実証実験をさせていただきました。関西に来てからは人が本当に親切で、たくさんの自治体に繋いでいただき、多くのことで助けていただきました。

桺本さん:メンタルヘルスケアは日本では成長しているのですか?

武川さん:おそらくあまり大きくなってはいないと思います。元々メンタルヘルスは、とても複雑かつ重要な課題ではあったものの、コロナ禍になり、より顕在化し深刻化しているのです。今、日本の環境を見ていると、シードラウンドの調達リリースが増えてきているので、立ち上がりくらいの段階だとは思います。市場として成熟してくるのは数年後になることが予想されるので、活気が出てくるのはもう少し先なのではないかな、と考えています。

桺本さん:ヘルスケアAIが当たり前になる世の中を望んでいますか?

千頭さん:そうですね、実際私は、大学時代にメンタルを崩した後、しばらく悪い状態を引きずってしまいました。なので、社会人になってから精神科に行ってカウンセリングを受けたのですが、先生が相手でも何を考えられているのかが怖くなってしまい、正直に自身のことを話せなかったんです。こんな風に悩んでいる方は私以外にもたくさんいるはずだと思います。世界では82%の方が悩みをロボットに相談したい、と思っているという調査結果もあります。当たり前にAIにケアをお願いできる世の中があればいいのに、と切に願います。

桺本さん:emolはどういったアプリですか?

千頭さん:チャットがベースになっておりまして、入口としてはまずは感情を記録するところから始まります。そして、その感情についてAIに話していただきます。まずは気軽にAIと話しながら自分自身をモニタリングし、言葉にすることで自分を客観的に見ることができます。そこからの具体的なケアとしては、セルフケアプログラム、というものをご用意しておりまして、チャットでAIが言うことを実践すると、認知行動療法を体験できるというものです。絶対に人間を介さない、と決めているので、AIの裏にも人を入れていません。

桺本さん:キャラクター、「ロク」が話を聞いてくれるのですか?

千頭さん:はい、そうです。なのでキャラクター性にはかなりこだわって作っておりまして、絶対にユーザーの味方として、言い方の柔らかさであったり、悩み事に対しての共感や励ましであったりの設計は注力しています

約一時間にわたって行われた今回のイベント。会場は多くの参加者で賑わいました。
運命共同体のように、互いに寄り添いあい起業した千頭さんと武川さん。この当事者にそっと寄り添う優しいアプリ、emolはこの2人だからこそ作れたのかもしれません。
少し疲れてしまった毎日の中で、ロクという友人を持ってみるのもいいかもしれませんね。

(レポート作成:澤村 花霞)

PAGE TOP