イベントレポート
Kyoto Startup Monthly Discussion #08レポート(2022/1/19開催)
Kyoto Startup Monthly Discussionは、京都から若い世代の起業家を創出するため、京都で活躍する先輩起業家とのパネルディスカッションや交流を通して、起業に対するハードルを下げ、京都から起業しやすい世の中をつくっていくことをミッションとしているイベントです。
今回は「歯医者の遠隔オンライン診療実現する 口腔領域DXの未来」をテーマに、株式会社スクリエの岡本孝博さんをゲストに迎え、モデレーターの桺本さんを通じてお話をお伺いしました。
岡本さんはアパレルデザイナーから歯医者に転職した、異例の職歴の持ち主で、デザインをしてユーザーに良いものを届けるよりも、歯科医療をリデザインする時期にきたと思い、株式会社スクリエを起業されました。お口の健康と全身の健康は密接に関係しているにも関わらず、定期的に歯医者に通う人は約3割に留まります。そこでスクリエは、テクノロジーで「お口の健康」を支えるDental Tech Companyとして事業を展開。自宅で歯科ドックができ、最適なオーラルケアを提案、さらに革新的なオーラルケアグッズを製造するといった、自宅でお口の健康を維持することができる画期的なサービスです。健康寿命を伸ばし、社会保障費を削減、従来の歯科体験から医者も患者も自由になれることを目指されています。
桺本さん:岡本さんのキャリアについて教えてください。
岡本さん:中高でアルバイトをしてお金を貯め、高校卒業後に一人暮らしを始めました。当時はアパレル関係で働いていましたが、服飾はお金を稼ぐのがかなり大変でしたね。
桺本さん:アパレルから歯医者になったのはかなり異色のキャリアだと思うのですが、なぜ転職されたんですか?
岡本さん:途中、アパレルと歯医者の二足の草鞋を履いていたこともありましたが、歯医者の実習などが入ってくると両立が厳しくなり、アパレルを辞めることになりました。
アパレルは最初1人でやっていて、そこで販売していた自分の絵がよく売れていたんです。アパレルの経営について試行錯誤していたときに、絵を買ってくれた方がご自身のアパレル店を新規オープンさせる際に誘ってくださり、一緒にやることになりました。そこから歯科医系の大学に通い、資格を取得。本当は研究がしたかったんですが、タイミングが合わなくてできず、臨床の道に進みました。
桺本さん:歯医者から起業に至ったきっかけはなんですか?
岡本さん:歯医者はいいサービスを提供していれば、同じくらいのリターンもあります。しかし、サービスというものが決められた制度の中で値段設定され、提供されているということに違和感を感じるんです。その違和感を払拭した、きちんとしたサービスを提供したい、という想いからこのサービスを開発しました。創業が2018年で、その時はまだ大学に在学していて、その間は知財を取ろうと頑張っていました。現在はビジネスモデル特許が3つありまして、全部合わせると7つほど特許を取得しています。
桺本さん:まず特許から抑えていったんですね。
岡本さん:それしかできることがなかった、というのもあるのですが、ある優しい製薬会社の方が『自分のアイデアをあまり人に言わない方がいい、特許をとった方がいいですよ』と教えてくださって、余っている自己資金で特許を取得しました。
※右側:株式会社スクリエ 岡本 孝博さん
左側:モデレーター 桺本 頌大さん
桺本さん:一番初めに取得した特許はなんですか?
岡本さん:マウスピースですね。創業前の2014年に取得しました。東京の知り合いにIT系の社長がいまして、その社長にアイデアを話したところ、『面白いから特許をとった方がいい』と言っていただいた事がきっかけで取得し、そこから改良を重ね、今に至ります。
桺本さん:今、開始しているサービスはありますか?
岡本さん:オンライン歯科ドック、というものがありまして、それにお申し込みいただくと口腔内写真が撮影できるミラーも一緒に申し込みしていただけます。現在はテストマーケティング段階ですね。これは医療行為に該当するので、申請と私の持つライセンスでクリアしています。
桺本さん:やはりそういうライセンスを所持している、というのは会社としての強みになりますね。
桺本さん:何名で会社を経営されているのですか?
岡本さん:基本2人なんですが、サポートしていただいている方やエンジニアの方にもジョインしていただいています。特にエンジニアの方はこうしてほしい、とお願いすると、そのまま実現してくださいます。これは京都の良さですね。
桺本さん:エンジニアはどのように集められましたか?
岡本さん:実際とても集めにくくて。特定の事業に詳しいエンジニアなんてほぼ居ないので、イベントなどでお話しして探している状態です。また、コミュニケーションの取れるエンジニアの方がいらっしゃるので、その方にお願いするとスムーズに進むことが多いですね。これは京都ならではのネットワークで、東京ではなかなかそんなことはできません。
桺本さん:今後のフェーズについて教えてください。
岡本さん:例えば先ほどのマウスピースもですが、マウスピース矯正の会社の方から引き合いのお話をよくいただきます。ですが、僕たちのどうしても成し遂げたいこととして、ユーザーの体験を変えたい、というものがあります。そこをどう変えていくのか、という点について、もう少し考え、検証していきたいので、資金調達も後倒しにしたいなと考えています。
桺本さん:この事業の最終目標はなんですか?
岡本さん:ほぼほぼ歯医者さんが手間をかけずにどこまで診療できるのか、というところであり、弊社のサービスを利用することで、写真で情報を収集して、予約をとって決済も終わらせる、というような施設を1つ計画しています。店舗型で1度やってみて、残りの技術がどんどん進んでくれば、完全自宅化も夢ではないと思います。
桺本さん:サービス自体をいつ頃までに展開していくかの目標はありますか?
岡本さん:1年や2年かけて、どんどんユーザーを増やしていけるようなサービスになっていけば、私たちが目指す方向に向かっていけるのではないかな、と思います。
桺本さん:京都でスタートアップをする際の課題はありますか?
岡本さん:1度入り込んでしまえばとても心地良い環境ですが、入るまでは少し敷居が高く感じます。また、僕自身割と周りに合わせる方なのですが、京都は時間などと言った危機感がぼんやりしている印象を受けます。なので自分から行動していかないと知らぬ間にみんなで沈んでいってしまいそうだな、と感じますね。ちょっとずつ変わり出している部分もありますが、もっと全員で意識して行動した方がいいと思います。
約1時間にわたって行われた今回のイベント。
私自身、いつの間にか歯医者に行かなくなってしまった記憶があります。
つい、蔑ろにしてしまいがちなお口の健康。自宅でお手軽にそれを守れる日がくれば、日本中が健康で笑顔になることでしょう。
(レポート作成:澤村 花霞)