イベントレポート
Kyoto Startup Monthly Discussion #13レポート(2022/6/15開催)
Kyoto Startup Monthly Discussionは、京都から若い世代の起業家を創出するため、京都で活躍する先輩起業家とのパネルディスカッションや交流を通して、起業に対するハードルを下げ、京都発の起業家や新たなビジネスの種を発信していくことをミッションとしたイベントです。 今回は「サスティナブルな取引の実現でコーヒーと笑顔を届ける」をテーマに、株式会社アカイノロシCEOの矢野龍平さんをゲストに迎え、モデレーターの桺本さんを通じてお話をお伺いしました。
株式会社アカイノロシは、矢野さんが大学4年生の時に設立されました。タイ北部で暮らす少数民族、「アカ族」が作るコーヒー豆に生産から関わり、輸入、販売までを一貫して行われています。焙煎所兼店舗の「Laughter」や、お花屋さんとのコラボ店舗をオープンされたりと事業展開されています。アカイノロシは創業ストーリーも含めて商品価値としているのが特徴です。大学3年生の時、縁あってタイへ行くことになった矢野さん。タイの山の中で、自らが焙煎したコーヒーを飲んだ時に、物質ではなく体験からくる美味しさに気づき感動し、帰国後起業されました。しかし、コーヒーの知識は一切なく、プロからダメ出しをもらいながら経験を積む日々。そうして知識と経験を身につけた矢野さんは、再びタイに行き、日本で偶然入ったカフェで見つけた美味しい豆の農園主、「チャーリーさん」を名前だけを頼りに探しだし、農園に通い詰めてなんとか契約。そうしてやっと株式会社アカイノロシが設立されました。
※右側:株式会社アカイノロシ 矢野 龍平さん 左側:モデレーター 桺本 頌大さん
桺本さん:起業のきっかけはなんですか?
矢野さん:タイから帰ってきた時は、そこまで起業について考えてはいませんでした。その当時、周りは就活を考えだす時期でみんなインターンに行っていたんです。でも僕は、就職をするために興味のない会社にインターンに行く必要が感じられなくて。周りに経営者が多くて、就職以外の選択肢が身近にあったので、そもそも就職することに執着していなかった、というのもありますね。なので、あえて起業することを将来の選択肢に加えたわけではなく、自然に起業に行き着きました。加えて、学内のビジネスプランコンテストにコーヒーの内容で出場したこともあって、そこで起業が現実味を帯びましたね。
桺本さん:「Laughter」では、カフェの運用と豆の販売が中心ですか?
矢野さん:カフェより物販に力を入れていて、関東圏や北海道などに豆を販売したり、卸もやっており、売り上げ比率では豆の販売の方が多いですね。コロナ禍に創業したこともあって、店舗で収益をあげることを想定していません。また、豆の倉庫としても活用しています。
桺本さん:豆は今もチャーリー農園のものだけを使用しているのですか?
矢野さん:店舗ができるまではそうでしたが、できてからはタイに限らず、いろんな国から豆を購入しています。
桺本さん:創業までの道のりは決して楽ではなかったと思いますが、それでも創業が実現できたのはなぜですか?
矢野さん:当時は特に難しいことは何も考えていなくて、目の前の問題をどう解決するか、で動いていたからですかね。目の前のことに全力で取り組んでいたら、気付けば創業のところまでたどり着けた、という感じで。
桺本さん:起業家の方は皆さん行動力がすごいですよね。
桺本さん:特に京都には多くのコーヒーショップがあると思いますが、他と差別化している点はありますか?
矢野さん:京都のコーヒー業界はすでに市場があって、カフェで飲む人だけでなく、豆を買ってお家で飲む人も多いので、豆の消費量が多い傾向にあります。そこでどうにか差別化しようとして、独自すぎてニーズの無いものを提供しても意味がありません。なので僕たちは、商品自体を改変するのではなく、コーヒーを提供するまでのプロセスにオリジナリティを出すことにしています。このイベントに呼んでいただいたのも創業までのストーリーがあってこそ。他のコーヒー屋さんで、なかなかこういったイベントでお話をしているところは少ないと思います。
桺本さん:お花屋さんとコラボしている店舗について詳しく教えてください。
矢野さん:お花屋さんの一角をカフェスペースにさせていただきました。そのお花屋さんはちょうど創業70周年を迎えられ、記念に何か面白いことをしたいと考えていて、その時ちょうど隙間スペースの活用としてどこかでカフェができないか、と思っていた僕たちとコラボレーションが実現したんです。
桺本さん:お花屋さん以外のコラボも考えていたりしますか?
矢野さん:そうですね。実はLaughterという名前には、あえて“コーヒー”というワードを入れていません。コーヒーだけに縛られず「Laughter」独自のブランドが作れれば良いなと考えています。なので、コラボレーションは積極的に行なっていきたいですね。
桺本さん:会社名の由来はなんですか?
矢野さん:アカ族の『アカ』と煙の『ノロシ』でアカイノロシです。アカ族が暮らしている山からノロシをあげて、コーヒーのことをもっと知ってもらいたい、という意味です。また、あえて日本語にして、将来的な海外進出を見越しています。
桺本さん:今後の展望はありますか?
矢野さん:将来に対して何か具体的に考えているわけでは無いですが、自分が何がしたいか、というのが大きく関係しています。こういう会社にしていきたい!みたいな大きな目標ではなく、自分がやりたいことを実現して行きたいと考えています。例えば、空いている倉庫を改装して、ファクトリー兼店舗としてコーヒー農園をやってみたいですね。その農園を近くの学校や地域の方に体験農園として提供していけたら、と。コーヒー以外のことも、チャレンジしていきたいですね。
桺本さん:起業を目指す方へメッセージを!
矢野さん:起業を目指すにあたって、僕はあまり人の意見を聞きませんでした。それこそ、コロナ禍に「Laughter」をオープンすることに対しては、全員から反対されました。でも、いざオープンしてみると『やってよかった』と思うんです。周りの意見を全て取り入れてしまうと、自分のやりたいことは蔑ろにされて身動きが取れなくなります。本当に信じたものがあるなら、頭でいろいろ考える前にとにかく足を動かして、前に進んでいくことが大切だと思います。
約1時間にわたって行われた今回のイベント。自分のやりたいことに正直なる、ということは簡単そうに見えてとても難しいことです。本当に叶えたい夢があるなら、心配より先に勇気を出して、とにかく前に進むことが大切なのかもしれません。
(レポート作成:澤村 花霞)