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Kyoto Startup Monthly Discussion #19レポート(2022/12/21開催)

Kyoto Startup Monthly Discussionは、京都から若い世代の起業家を創出するため、京都で活躍する先輩起業家とのパネルディスカッションや交流を通して、起業に対するハードルを下げ、京都発の起業家や新たなビジネスの種を発信していくことをミッションとしたイベントです。

今回は「モビリティサービスを通じ人々の生活圏を広げる」をテーマに、株式会社Clewの西本統さんをゲストに迎え、モデレーターの桺本さんを通じてお話をお伺いしました。

株式会社Clewは圧倒的に便利な「交通インフラ」の補完サービスを京都を中心に展開されています。様々なモビリティの提供をする中で、最も力を入れているのが自転車。専用駐輪場(ポート)間で自由に乗り降りすることが可能な、次世代のシェアサイクルサービス「PiPPA(ピッパ)」を運営し、生活をより豊かにするために、単なる移動手段にとどまらないその先のサービスの提供を目指しています。

桺本さん西本さんのキャリアについて教えてください
西本さん僕は高校を卒業した後、アメリカの大学へ進学しまして、その後東京に上場している企業へ就職。そこで3年ほど働いた後、株式会社オーシャンブルースマートにスタートアップとして参画し、今に至ります。元々PiPPAはオーシャンブルースマートが作り上げ、運営していたサービスで、我々が事業譲渡と言う形でサービスを引き継ぎ、株式会社Clewを立ち上げました。

桺本さん起業の決断への不安感はありましたか?
西本さん 不安はあまりありませんでした。転職社会になりつつある今の世の中で、いろんな社会に出てみた方が楽しいと、僕は思っていて、起業も選択肢の1つだな、と。自分のできそうな範囲で“起業”という選択をするチャンスが巡ってきたので、やってみようと思いました。とはいえ、最初僕はリスクヘッジとして上場企業に入社しました。上場企業の良さは、世の中の一定水準以上の高いレベルの環境を知れること。大学を卒業してすぐの僕がどこまで通用するのかを知るために就職しました。でも人生は1回きりですので、いろいろな選択をしたいなと思って、3年だけ、と決めて入りましたね。

桺本さんPiPPAはどのくらい続いているのですか?
西本さん 2018年6月から、約4年ほどです。最初は、京阪電鉄様と京都市都市整備公社様と連携させていただきながら、徐々にサービスを広げてきました。当時はシェアサイクルってあんまりなくて、今までにない新しく、便利な移動手段として好評でした。あらゆる人に移動というものは関わってくるので、できることはまだまだ沢山あると感じています。

※右側:株式会社Clew 西本 統さん
 左側:モデレーター 桺本 頌大さん

桺本さんPiPPAの事業は京都のみで行っているのですか?
西本さん 僕らが担当しているのは京都と滋賀の一部です。シェアサービスっていうのはどこでも広げられるわけではなくて、ある程度人口密度が高いエリアでないといけません。毎日欲しいものは買った方が便利なので、なくてもいいけどがあったら便利だな、と感じる程度の場所にニーズがあります。

桺本さん僕の感覚では京都は観光客が多いこともあって、バスや電車が不便だったりすることも多い。シェアリング事業に関しては、すごく最適な場所なのかな、と感じるのですが、実際どうですか?
西本さん 僕もそう思います。京都市って本当にコンパクトシティで、東京とかだったら電車で1時間移動とか普通なのに、京都は10分乗れば府外に出れる。それくらいコンパクトなので、自転車移動がすごく適していると思いますし、利用者の方にとって非常に便利なのではないかと。また、住んでいる方のみならず、観光客の方にも使っていただいているので、そこで若干高効率なサービスが作れているという点も、シェアに適していると感じるところです。

桺本さんどのような利用方法がありますか?
西本さん 多いのは30分以内の利用で、7割を占めています。京都は東西の移動が少し弱いため、横の移動でよく使っていただいているのかな、と。

桺本さん料金のシステムについて教えてください
西本さん 本サービスでは3つのご利用方法をご用意しておりまして、シングルライド利用という通常利用と、月額利用、デイパス利用。シングルライドは30分ごとに110円です。1分いくら、みたいなサービスが多いけれど、1分ごとにお金がかかるのは少しストレスなので、ちょっと余裕を持って、街をゆっくり走ってもらえるような設計をさせていただいています。

桺本さんいいですね、通勤とかでも使えるし。」
西本さん 月額利用者さんはキャンペーンなどもあって、月1500円を一度お支払いいただければ1回につき12時間まで乗れます。実質ほぼ無料です。

桺本さん1つのポートに自転車がいっぱいになることはありますか?
西本さん ありますね。自転車を多いところから少ないところに移動させたり、メンテナンスをしたりといった、再配置業務は定期的にさせていただいていますが、基本的には、リアルタイムで自転車が何台返ってきていて、何台ここにあるよっていうのが、アプリから見ることができるので、それを確認しつつご利用いただく形になります。

桺本さんどのくらいの利用がありますか?
西本さん 月4000~5000台くらいですね。3、4割が月額利用の方です。駅で駐輪所を借りようと思ったら3000円くらいするので、そこを考えると自転車がついてきてこの利用料金は破格です。ただ、どこにでもあるサービスではないので、その辺を考慮して使っていただければいいかな、と。

桺本さんポートはどのように増やしているのですか?
西本さん 直接お声がけさせていただいたり、お電話させていただいたり、ご紹介を受けたり、様々な方法で土地オーナー様に知っていただき、契約をさせていただいています。今まで1円も生み出すことのなかった未活用地を貸していただいて、少しだけ僕らが運用させていただくようなな形で。例えば店舗様だと、お客さんに来ていただく際、移動手段があった方が便利なので、集客目的で設置いただいたり、いろんなところで繋がり、ご理解頂きながら運用させていただいています。

桺本さん京都に競合はありますか?
西本さん 東京からいらっしゃっている企業さんの、電動キックボードのシェアサービスなどがありますが、現状では僕らがマーケットリーダーとして展開させていただいております。自転車がなぜ便利かというのを2軸で考えると、1軸が自由度の高さ、もう1軸が料金のお手軽さ、これを忘れちゃいけないな、と。ゆくゆくは、場所に応じて電動キックボード等を導入したり、いろんな選択肢を場所に合わせてやっていければいいな、と思います。

桺本さんPiPPAの今後の展開について
西本さん 今後はまず200箇所あるポートを500箇所まで増やしていきたいな、と。500まで増やすとどうなるかというと、大体150m~200m間隔でポートがある状態。そうすれば、多くの方にとって便利なポイントが用意できるかと思います。加えて、もう少し先の話をすると、人口の1%程度の導入が必要かな、と考えておりまして、大体1万台から1万5000台の自転車が収容できるようなポート数を作っていきたいなと。そこにプラスして、いろんなモビリティを可能な範囲で、事業者様とご協力しながら導入していきたいです。これらがハード面での展望で、僕らが本当にやりたいこととして、価値観で人と出会うことができれば面白いな、というのがあります。自転車っていうのはあくまで手段の1つ。お店を紹介しあったり、他の人と出会ったり、その場所に対する想いを知ってもらったり、そんな事業が将来的にできればいいな、と思います。

約1時間にわたって行われた今回のイベント。
京都の交通問題をいち早く解決するPiPPA。
シェアサイクルサービスを利用することで、普段見えない京都の良さが見えてくることでしょう。

(レポート作成:澤村 花霞)

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