EVENT REPORTイベントレポート

キャリアにおける「スタートアップ」という選択 (2021/3/26開催)

スタートアップの多くは、市場開拓や人材確保、資金調達など様々な課題を抱えている。そうした課題を乗り越え、さらなる成長のステージを目指すためにはどのような取り組みが必要だろうか。本イベントでは「キャリアにおけるスタートアップという選択」と題し、スタートアップであるgifteeの鈴木達哉さん、ベンチャーキャピタル(以下VC)のインキュベイトファンドの本間真彦さん、East Venturesの毛利洵平さんをゲストに迎え、Re:Viveの鈴田泰久さんをモデレーターとして、スタートアップの魅力やVCとの関係性などについて語っていただいた。

※動画は以下からご覧ください。
https://youtu.be/CGE7njNSqJM

(登壇者)
・スタートアップ
株式会社ギフティ 代表取締役社長 鈴木 達哉氏

・VC 
インキュベイトファンド 代表パートナー 本間 真彦氏
eastventures 毛利 洵平氏

 ・モデレーター
Re:Vive 鈴田 泰久氏

スタートアップを選んだ理由

スタートアップとはどのような企業なのか

gifteeの鈴木さんは、「すでに存在、もしくは新たな市場の課題を新しいアプローチで解決しようとしている会社」だと語った。スタートアップは、外部の資本を活用しながら、ソーシャル型のビジネスモデルでイノベーションの創出を目指していることが特徴だ。

East Venturesの毛利さんは、鈴木さんの意見を踏まえた上で、自分の労働の対価として賃金を得るのではなく、自分自身でゴールを決めることが大切だという。

インキュベイトファンドの本間さんは、二人の意見の補足として、自分一人では達成できない課題も、仲間を集めてその活動域を広げていくことで解決できると語った。ステークホルダーやパートナーの知恵を掛け合わせ、共に成長・発展を目指せるのがスタートアップの魅力と言えるかもしれない。

スタートアップを取り巻くVC

 鈴木さんは、VCの存在を伴走者や家族のような存在であると例えた。
鈴木さん「起業家の初期の意思決定を後押ししてくれる一番の理解者でもあるVCは、中立の視点で経営が偏向的にならないよう、その時々のニーズに合った情報を与えてくれるバランス感覚に優れた良きパートナーです。プライベートでも仲の良いVCもいますし、VCは株式を取得する関係性だけでなく、一緒に新しい価値を作っていく存在です。」

 本間さんはスタートアップに関して、VCが絶対に必要なわけではないと語った。
本間さん「なぜVCを利用するのか? それは、VCから投資を受けることは、時間を買うことに等しいからであり、資金調達にかける手間と時間を省き、企業の成長・発展のコアとなる技術開発、市場開拓等に惜しみなく力を注ぐことができるからです。若い人たちが起業を志すにあたって、二人三脚で一緒に会社を立ち上げるお手伝いができたら嬉しいです。」

 毛利さんは、East Venturesは比較的若い世代の起業家に対して投資をする会社だという。
毛利さん「起業して間もない会社は実績もなく、金融機関などから融資を受けられないことも多い。志はあるが環境が十分ではない若い人たちに資金を提供することで、その独創的な発想や技術をプロダクトに生かし、新たな企業価値を作り出すことを使命だと考えています。」

スタートアップに関わる選択

 鈴木さんは学生時代、周りに起業する人が多く、ベンチャーという存在が身近にあったことが大きいと言う。
鈴木さん「最初に入社した会社はVCであり、もともと(株)ギフティに投資をしていたのですが、社外から経営に関わるうち、投資をする側ではなく、スタートアップとして世の中にない価値を生み出すことに魅力を感じるようになりました。投資家という仕事は、とても楽しく、いくつかのスタートアップと伴走しながら成長・発展をサポートすることにより、世の中を多角的に見ることができ、好奇心を刺激されることも多いです。」

 本間さんは学生のころ、金融経済に興味を持ち、そのとき面白いと思ったのがVCなのだと言う。
本間さん「数ある投資の中で、人やチーム、アイデアなどに投資をして利益を得る、といったVCの仕組みを非常に優れていると感じたのでVCの道へ進みました。実務についてみると、テクノロジーに対する投資が、世の中に大きなインパクトを与えるということを実感しました。」

 毛利さんは最初、I Tベンチャーに興味があったのだという。
毛利さん「大学時代、ある就活イベントに参加した際、実務経験豊富な社会人と交流すべきだという助言を受け、大学内のビジネスプランコンテストを主催する団体に入りました。運営側として様々なビジネスプランの構築とブラッシュアップを手伝っていくうち、将来は起業家をハンズオンできる仕事に携わりたいという思いを描くようになったのですが、当時関西ではVCになる環境が十分に整わず夢を諦めかけていました。そんな時、東京で開催されていたVCスクールでEast Venturesと出会い、入社することになりました。」

VCから出資を受けるとどうなるのか

鈴木さん「資金調達だけでなく、社会的なネットワークが十分でなく、市場にどのようにアプローチしたら良いか分からないとき、VCが様々な人との出会いの場、商品・サービスを世に問いかける場を提供してくれました。スタートアップに足りない部分を補完してもらいながら、Win-Winの関係で企業価値を高めていくサポートをしてくれるのがVCの魅力です。」

本間さんVCとスタートアップは5年、10年といったスパンの付き合いになるので、『意見を押し付けられたらどうしよう』『自分の意に添わないことを言われたらどうしよう』といった懸念をVCに抱いている人もいますが、受け入れるかどうかを決めるのは経営者自身。いろんな判断基準を持ち、鋭敏な経営感覚を養っておく必要がある。」

毛利さん「株主やお客様、従業員などステークホルダーに対して、彼らが求めていることを反映した事業計画を作成することで、長期的な信頼関係が構築できます。スタートアップは、EXITをどのように設定し、投資してくれた会社や人にどのような利益を提供できるのか、常に明確にしておく必要があるので、自社の強みを磨き、社会的課題を解決していくような価値のある商品・サービスを展開していく努力が求められる。」

スタートアップの始め方

まず準備すべきこと

鈴木さん「新たな起業を目指すにあたって、VCはスタートアップが持っていない知見を広く持ち合わせているため、実際に出資を受けられるかは別として、まず困っていること、悩んでいることを相談してみるべきだと思います。起業を考えたときから、業種・業態にとらわれず様々なVCと話をすることで、自分や経営チーム、展開しようとしている市場との相性を見定めることが大切です。」

本間さんVCと話をするときには、ただ資金を調達したいということではなく、VCに投資をしてもらうことで、どんな付加価値を生み出せるのか、どのようなビジョンを思い描いているのか、明確に説明できるようにしてみてください。投資家の心を動かすような熱意、本気度を伝えることが重要です。」

「東京でスタートアップしたほうが良いのか」との問いに

毛利さん「首都圏はスタートアップ企業が多く、VCも集中しているため、東京で起業したほうが支援は得られやすいと思います。ただ、関西など地方都市で起業したとしても、社長など会社の意思決定を担う人が東京に来ることができ、VCとの信頼関係が構築できる環境であれば、必ずしも拠点を移す必要はありません。」

どういった人がスタートアップに向いているのか

鈴木さん「長期的な視点で物事を考えられる人や、強い欲求をモチベーションに変えられる人、ですかね。無理に高いゴールを掲げなくても、知的好奇心を持ちながら成長・発展のプロセスを楽しむスタートアップもありますよ。」

本間さん「どうしても起業したいという強い動機、諦めたくない動機がある人の方がスタートアップに向いていると思います。スタートアップというのは車に乗っている状態です。ドライバー自身でスピードや、行き先を決めることができる企業は、困難な状況に直面しても決して目標を見失うことなく、揺るぎない信念をもって前へ進むことができます。」

毛利さん「スタートアップというものを志したとき、何か強い感情が持てる人は起業家として適していると思います。ワクワクしたり、悔しさを感じたり…、世の中の不都合や不便、不満を自分事としてとらえ、ビジネスプランに生かすことができる人は、社会課題を解決できる価値が提供できる。」

良いスタートアップを見分けるヒントは?(質疑応答より)

鈴木さん「自分が求めるものをはっきり決めて、可能なら経営陣と会ってみてください。経営者が働いている様子を目の当たりにできるくらいの距離感でコミュニケーションが取れると、経験的にも良いものになります。」

本間さん「スタートアップを目指すにあたって、いきなりスタートアップに入社する必要もないと思います。まず組織がしっかりした会社に入り、人事や給料を見てからスタートアップの世界に来ることも大事なことですよ。」

毛利さん「どの段階のスタートアップにいきたいのか、その会社が今どういう状況なのかをよく考えることが大切です。それでも分からなかったらVCに相談し、投資先であるスタートアップ企業を紹介してもらうのも、一つの手だと思います。」

 

 

約一時間半にわたって行われた今回のイベント。

昨年、京都は国が重点支援するスタートアップエコシステムグローバル拠点都市に選出された。本イベントの主催である、一般社団法人京都知恵産業創造の森はスタートアップを生み出すエコシステムの形成を担っている。このイベントがスタートアップの創出のきっかけになれば幸いだ。

 

(レポート作成:澤村 花霞)

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