INFLUENCERインフルエンサー

株式会社Monozukuri Ventures 代表取締役 牧野 成将

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サンフランシスコやNYとは一線を画する京都が目指すスタートアップエコシステム。いま京都に求められるのはスタートアップとエンジェルのコミュニティ

古くから京都のまちを支えてきたモノづくり。西陣織や組紐などの伝統・工芸から始まり、現在の最先端技術まで、脈々と受け継がれてきた技術や情熱は、今も尚、世界に通用する産業です。
京都が誇るモノづくりの技術と、スタートアップが生み出すモノづくりを掛け合わせた事業を展開するのが、今回ご紹介する株式会社Monozukuri Ventures。代表取締役の牧野成将さんに、京都のスタートアップ支援の現在地をお伺いしました。

シリコンバレーで見つけた、モノづくりスタートアップの「死の谷」

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まずは事業内容について教えてください。

牧野Monozukuri Venturesは、世界中の起業家が高い品質の製品を、少量でも素早く生産・販売することができる世の中を実現させる会社です。事業は大きく二つ、一つがスタートアップのモノづくりをトータルでサポートするテクニカルコンサル事業。弊社のモノづくりに関するエキスパートが、アイデア~試作~量産のそれぞれのステージにあわせて最適なソリューションを提供します。
もう一つが、投資事業です。日本で初めての「試作」に特化したファンドで、金融機関やスタートアップのモノづくりを応援する製造業にも参画いただいています。対象は、日本または米国に拠点をもつシード、アーリーステージのスタートアップです。

なぜそれらの事業を始めたのでしょうか?

牧野世界に通用する日本の強みは、モノづくりにあると気づいたからです。
起業前、京都・東京(大阪事務所)のベンチャーキャピタル(以下、VC)で働いていた時に、シリコンバレーによく行く機会があり、プレゼンやイベント出展で自社のことを話すのですが、あまり興味を持たれなかったんですね。
そんな中、唯一興味を示してくれたスタートアップがモノづくり系でした。理由を尋ねると、日本はモノづくりが上手なイメージがあるから、どうやっているのか知りたいと。

帰国後調べてみると、モノづくりのスタートアップには量産化の壁があることがわかりました。3Dプリンターの登場で、簡単に試作品を作れるようになりましたが、量産化をするには金型を使うことになります。そのためには、量産設計や量産試作が必要。でも、3Dプリンターと金型の設計は全然違います。実はここに大きなギャップがあり、ハードウェアスタートアップの「死の谷」になり、多くの企業が苦労していたのです。

「TOYOTA」や「HONDA」、「SONY」の活躍から、日本は量産化が得意と思われたんですね。

牧野さらに調べていくと、「ハードウェア is ハード」だとわかりました。スタートアップするのも、VCが投資するのも難しい環境にあると。この大きな課題に、日本人なら解決できるのではないかと期待しているところに、ビジネスチャンスがあるのでは考えました。

不足する人材と資金を補うために提案する「エンジェル版ふるさと納税」

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京都で事業を始められたのはなぜでしょうか?

牧野中小企業の精鋭モノづくりネットワーク「京都試作ネット」があり、一緒に事業をしたいと思ったからです。企業が自律的なネットワークを組んで、試作ソリューションを解決する仕組みは、世界中を探しても非常に珍しい。これは大きな強みになると考えました。
3Dプリンターの試作はパソコンで設計しますが、量産化のための金型設計には専用の技術が必要です。ビットの世界をアトムに落とし込むには、一筋縄ではいきません。そこに、京都の企業が持つ豊富な経験と技術が生かされるわけです。2015年の創業から今までで、110件以上の支援をしてきました。

京都のエコシステムの現在地を、牧野さんはどのように見ていますか?

牧野京都のエコシステムは、非常にポテンシャルはありますが、不十分というのが正直なところですね。長年、京都は「ベンチャーの都」と言われてきていますが、それは過去の話しになっており、近年ではスタートアップの創業数は多くないですし、上場企業数も残念ながら大阪や兵庫に負けています。やはり日本の中では、東京が一番エコシステムとして充実しています。しかし、「日本でグローバルに通じるエコシステムの可能性がある地域はどこか?」と聞かれると、「京都しかない」と信じています。

なぜ京都に可能性を感じていらっしゃるのでしょうか?

牧野エコシステムというとシリコンバレーやニューヨークといった都市を想像すると思います。また世界中の都市が第2のシリコンバレーやニューヨークを目指してエコシステムの充実度を図ろうとしています。ただそれではいつまでたっても2番目なんですよね。今求められるのはエコシステム同士の「連携」であり、そのためにはそのエコシステムにしかない「価値」を磨き上げることだと思っています。その意味では京都は圧倒的に違う。京都の歴史や伝統、文化は、大きな強みです。それらがグローバルのエコシステムの一翼を担う可能性は十分にあります。僕らが投資した「Atmoph(アトモフ)」や「mui labo」は、デザインの視点から京都の感性をプロダクトに取り入れていますよね。

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今後、京都が豊かなエコシステムをつくるために必要なことは何でしょうか?

牧野京都のエコシステムはポテンシャルがあるという前提で、敢えて不足している部分をあげるとすれば、起業家同士のコミュニティと資金です。 京都には京都大学があり素晴らしい基礎研究をしていますが、残念ながら卒業生が東京に流出してしまっています。理由の一つは、京都にはまだスタートアップ同士のコミュニティが不足しておりそれが情報の不足に繋がっているからです。更にもう一つの要件である資金が絡みます。スタートアップに必要な資金は2種類あり、一つがシードマネーです。スタートアップを始める際、最初にお金を出す人が、京都にはほとんどいないんですね。だから学生は東京に行ってしまう。また、スタートアップが順調に事業拡大しIPOを目指す段階になると、数億円から10億円の資金が必要になりますが、京都のVCだと1〜2億円が限界です。そこでまた、人材が東京へ流出していまいます。

そうした課題を解決するにはどうしたらいいでしょうか?

牧野私はエンジェルと言われる個人投資家の方々が、スタートアップと触れ合うコミュニティの構築が重要だと考えています。エンジェルってお金持ちじゃないとできないイメージがあると思いますが、アメリカでは50万円、100万円単位と少額でも投資しています。それが税制優遇にも使われている。日本でもエンジェル税制はありますが、まだまだ普及していないので、もっと有効に使われるようになるといいなと思います。「ふるさと納税」のように気軽に税金の使い道を自分で選べるのはすごく良いことですよね。スタートアップのエンジェル税制の活用がもっと身近になったら、京都に足りない資金を補い、人材流出を防ぐことに繋がると思います。

スタートアップの支援者の活躍が、豊かなエコシステムを形成する

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これから京都でスタートアップ起業する人にメッセージをお願いします。

牧野起業家に言いたいことって、実はあまりないんですよ。スタートアップの人達って、みんな何かしらの思いを持ち、リスクを背負ってやっているので。彼らは今のままでいいんじゃないでしょうか。 どちらかというと支援側が、もっとやれることがあるんじゃないかと思います。VCや行政など、スタートアップの支援側が、スタートアップらしく、一生懸命に考え、働かなきゃいけないんじゃいかと考えています。

その一つが前段でお話された、「エンジェル版ふるさと納税」ですね。

牧野そうです。すでにエンジェル税制はありますが、まだまだ使いづらいというのが正直な感想です。せっかくよい仕組みがあっても使われないのは、やはり理由があります。是非、スタートアップの視点に立ってどうしたら使いやすくなるか、取り組んで欲しいです。

最後に、京都のおすすめスポットを教えてください。

牧野うーん、なんだろう。京都は先端技術もあるし、歴史もあるし、学術的な側面もある。幅が広いから一つと言われると難しいですよね。
あえて挙げるとしたら、装飾美ではなく、詫び寂びのような日本独自の美が表れている場所という意味で、銀閣寺です。こういった感性を刺激する場所が身近にあることは、京都で事業をするメリットの一つかなと思います。

株式会社Monozukuri Ventures
https://monozukuri.vc/ja/

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