INFLUENCERインフルエンサー

京都工芸繊維大学デザイン・建築学系 准教授 Sushi Suzuki

ポツポツと湧き出るような、底の見えなさが京都の面白さ。「学生のまち」で生まれやすい、スタートアップとは。

人口の約十人に一人が大学生であることから、「学生のまち」とも呼ばれる京都。毎年、全国各地から学生が京都に移り住み、一方で全国各地そして世界へと旅立っていきます。学生の目には、京都の街やスタートアップ界隈はどのように見えているのでしょうか。京都工芸繊維大学のデザイン・建築学系 准教授であり、KYOTO Design Lab(以下、D-lab)でプログラムに関わっているスシ・スズキさんに話をお伺いしました。

スタートアップに必要な情報や経験を伝える「教育者」

スシさんの活動内容について教えてください。

スシ建築学とデザイン学を中心としたコラボレーションのためのプラットフォームとして京都工芸繊維大学設立した「KYOTO Design Lab(以下、D-lab)」に2015年に着任し、 2019年には京都工芸繊維大学のデザイン・建築学系の准教授を拝命しました。
その中で主に2つのプログラムを運営しています。一つは、「Kyoto Startup Summer School」。スタートアップに必要な知識とスキルを2週間で学ぶプログラムで、定員35名のところ世界中から毎回百数十人の応募があります。
もう一つが産学連携プログラム「ME310/SUGAR」です。スタンフォード大学発祥で、異なる2つの国の学生がチームを組み、企業から出されたお題に対して製品・サービスを9ヶ月間かけて開発します。具体的な事例は、2016年度のプログラム参加学生とヤンマーさんが開発した水上パーソナルクラフト「Wheeebo」は、2019年に商品化しました。

スシまた、「Startup Weekend Kyoto」のオーガナイザーとしても活動しています。全世界で4,500回以上開かれ、36万人以上が参加しているスタートアップ実践イベントで、週末の54時間で、チームで起業にチャレンジします。コミュニティづくりをベースの考えに置いているので、参加者のFacebookグループで、情報交換やミートアップをすることで、起業に関心ある人達を繋げていく動きもしています。
最後が、講師・コーチです。スタートアップイベントなどで、日本のスタートアップに海外のピッチスタイルを教えています。
様々な活動をしていますが、根っこに共通するのは「教育者」です。一般的に教育者は学校で活動している方を指しますが、僕の場合は大学に留まらず、外にもフィールドを広げて教えています。

学生が変われば、街もエコシステムも変わる

様々な分野でご活躍されていますが、京都のエコシステムについてどのように見ていますか?

スシ東京やシリコンバレーと比べてアウトプット量は落ちますが、政令都市で比較すると、京都と福岡は頭一つ抜けています。京都の面白さは、ほとんどのスタートアップと繋がったと思ったら、またポツポツと出てくる。こんな知らない企業があったのかと驚きと発見があることです。京都は不思議な街で、何に関しても底が見えません。年齢や所属、分野等の属性によって見えるフォーカスが異なりますし、東京では有名な方でも京都では知られていないこともあります。スタートアップ以外も含めて、奥深く入っていくと見えない世界が広がっているところが、京都なんだと感じています。
とはいえ、京都のスタートアップに関わる方達のミートアップがあれば見てみたいです。プレイヤーだけではなく、サポーターやオーガナイザー側もそれぞれがどんなことをしているのか発表するだけで、見える化できますしデータベースになるのではないでしょうか。

京都の街自体やスタートアップに対して学生の反応はいかがでしょうか?

スシ学生は京都で働くことについて知る機会はほとんどありませんし、スタートアップに興味を持っている人もごくわずかです。そのため様々な仕事があり、エキサイティングなことが起こりそうなイメージのある、東京や大阪に出ていきたいと考えている学生が多いです。たしかに京都には、東京のようにバズっているコミュニティも、投資家が主催する大きなイベントもありません。でも、自分で足を動かして探せば、意外と必要なものは京都に揃っていることに気づくと思います。東京ほどビジネスライクでもないし、金融機関も行政も親身になって相談にのってくれるので、国内の中では割と充実した環境にあるのではないでしょうか。

京都は人口の十人に一人が大学生と言われる「学生の街」ですから、学生の動きが変わればスタートアップ界隈も変わりそうですね。

スシ海外には、卒業生の20%が起業している大学もあります。京都には約14万人の大学生が居て、毎年約4万人が卒業していきます。そのうち1%が京都に残りスタートアップを始めたら、毎年400社が生まれます。四人で一社と考えても、100社です。現実的な数字ですし、社会にもたらすインパクトは大きいです。

京都に適しているスタートアップとは?

京都で始めるのに向いているスタートアップはどのようなものでしょうか?

スシ一例ですが、LINEやPayPayのように企業とのネットワーキングがスケールするために重要なビジネスは、あまり京都に向いていません。大企業や投資家との繋がりやすさでは、東京に勝てないですからね。一方、cookpadくらいの繋がりと規模感で成り立つサービスは、京都に向いていると考えています。
また、京都は昔からBtoB企業が強く、グローバルニッチな分野で活躍している企業があります。モノづくりに関してはエコシステムがあるので、まだまだ勝負はかけられると思います。

これからスタートアップを始める方にメッセージをお願いします。

スシ先ほど各都市を比較しながらお話ししましたが、スタートアップをやりやすい場所は、今住んでいる場所なんですよね。すでにネットワークがあるところから、国やまちをわざわざ移動するメリットって、実はほとんどありません。あえて移動するとしたら、地方住まいで周りにリソースがない方かなと思います。
京都は東京に比べたらリソースは足りていません。でも、小さな市町村に比べたら京都の方が環境は整っています。外国人コミュニティも強いので、世界を目指して近隣の町から京都に来てスタートアップを始めるのはありだと思います。

スシさんおすすめの京都のスポットを教えてください。

スシ「堀川遊歩道」です。御池通から一条戻橋付近まで往復約3km。軽くランニングするのにちょうどよい距離で、ご近所のおじいちゃん・おばあちゃんが会話をしている風景を見ながらよく走っています。三条会商店街も近いので、ランチするにも便利です。

KYOTO Design Lab
https://www.d-lab.kit.ac.jp/

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